〜 周囲の方へ 〜
震災発生時に役立つ障害者介助のための基礎知識


1 視覚障害のある人の場合
(1)声のかけ方
 まず、名前を呼びます。名前を知らない場合は、かならず近くにいって、声をかけます。離れた所からでは、誰に声をかけたのか判断が難しいからです。
 声をかける場合には、「大丈夫ですか」と声をかけるより、「お手伝いしますか」などがよいでしょう。

(2)周囲の状況説明の仕方

 ア  ことばの選び方・使い方
 「これ」、「それ」などのことばは、指しているものが何か理解できません。具体的に「この何々」というように、ものの名前を言うことが大切です。
 また、「前」、「後」、「右」、「左」などの言葉も、説明者を基準にすると視覚障害のある人は位置関係を間違えます。こうしたことばを使う時には、視覚障害のある人を基準として、「あなたの右側」というように説明します。


 イ  クロックポジションによる説明
 方向や位置を説明するには、視覚障害のある人を基準として「前」「後」「右」「左」というように説明する方法と時計の文字盤を例に説明する方法(クロックポジションと言います。)があります。次に二つの場面を紹介しますが、いずれも、視覚障害のある人の正面を時計の12時の方向として説明します。

[例1].広い環境での説明
 視覚障害のある人が時計文字盤の中心にいると仮定して、対象物の方向を示します。
 前方が12時、右が3時、左が9時、後ろが6時となります。
 「避難所の建物は1時の方向です」
などのように説明します。



[例2]狭い範囲の説明
 テーブルや膳などを時計の文字盤に見立ててものの位置を示します。
 「ケーキが9時、飲み物が3時、フォークは6時です」
というように説明します。



 ウ  手による確認
 ものの位置や状態などは、視覚障害のある人に手で直接触れてもらったほうが、ことばによる説明より分かりやすい場合があります。ただ、触れてもらおうと手を取るときには、「手を取ります」などと、事前に声をかけることで驚かれずにすみます。


(3)歩行にかかわる援助

 ア  協カの必要性が高い場合
 白杖を使ってひとりで歩いている人であっても、以下のような場合には、誰か近くにいる人の協カの必要性が高くなります。
  • 鉄道のプラットホーム、特に両側とも線路となっているホームの場合
  • 交通量が多く、歩道と車道の区別のない道路
  • 道路の横断時
  • 白杖では見つけにくい高さに障害物がある場合(例えば、胸の高さにあるロープなど地面と障害物との間があいているような場合)
  • 立ち止まって考え込んでいるなど、困っていると思われる場合
  • 道路に亀裂や陥没があり、ずれている場合
  • 道路に倒壊物がある場合
★いずれの場合も、声をかけ、状況の説明をした上で、協カの必要性をたずねます。


 イ  誘導法
基本形
 視覚障害のある人の誘導の基本の形は、誘導者のひじの少し上を後ろから視覚障害のある人に軽く握ってもらい、誘導者が半歩前を歩きます。また、肩を視覚障害のある人につかんでもらう方法もあります。こうすることで誘導者の動きが伝わりやすくなります。
まず、視覚障害のある人に、どのような方法で誘導したらよいかをきいてください。
白杖、手や腕を引っぱること、また、体を後ろから押すことは絶対に避けてください。


歩く速度
 歩く速度は、視覚障害のある人に合わせます。視覚障害のある人の手や腕にカが入っていたり、腰の引ける姿勢になる場合は、まだ歩く速度が速い可能性があります。
 坂や段差など路面の変化がある場合には、その少し手前から速度を落とし、坂や段差などの直前で停止して状況を説明することで、視覚障害のある人も状況を把握できます。

別れる時
 誘導して目的の場所まで行った後、視覚障害のある人と別れる際には、目標物の位置や進行方向を具体的に説明し確認しておくことが大切です。例えば、目的の建物の前でそのまま別れるのではなく、建物の入り口まで進み建物に触ってもらうなどして、位置や進行方向を確認してから別れます。



2 聴覚障害のある人の場合
(1)話し方

 ア 聴覚障害のある人に口の動きがよく見えるように、ゆっくり、はっきり話すことが大切です。
 イ なるべく短い文章で、文節ごとに区切って話しかけるとよいでしょう。
 ウ なるべく静かなところで、近づいて話します。
 エ 箱形補聴器を使っている人と話をする時には、補聴器のマイクを口元に近づけて話すようにします。


(2)聴覚障害のある人から助けを求められたときの配慮
 聴覚障害のある人は、通常は外見から見分けがつきません。また、自分から聞こえないことを意思表示することが少ないのです。聞こえていないことに気づいたら、文字で伝える工夫をしてください。

 ア 交通情報や安全な場所などの大切な情報は、筆談で正確に伝えてください。
 イ 電話を代理でかけることを依頼されたら、筆談で電話先、依頼内容や返答内容を確認しながら進めてください。
 ウ 筆記用具がそばにない場合には、手のひらに指先で字を書いて伝えたり、空間にゆっくり、ひらがなで字を書きながら、口の形をはっきりさせて話します。


(3)災害時に手話で話しかけられたときの対応
 覚えておくと役に立つ手話



3 ことばに不自由のある人の場合
(1)話をするときの注意

 ア 子ども扱いをしない
 ことばによるコミュニーションが難しい人でも、多くの人はものごとの判断や理解はできます。子ども扱いをしたり自尊心を傷つけるような言動には十分に注意することが大切です。
 話しかけたことに対してスムーズに返事が返ってこなかったり、たずねたことと違う答えが返ってくるような場合には、質問の仕方を工夫してみましょう(質問などやりとりの方法の工夫例については後述します)。


 イ 本人と話すことを心がける
 うまく聞き取れなかったり、時間がないと、無意識のうちに本人ではなく家族や付き添い者に話しかけてしまうことがあります。このことが本人の気持ちを傷つけることもあります。できるだけ本人と会話をすることを心がけましょう。


 ウ 相手の目の前で話をはじめる
 話しかけるときは近くにいき、ことばに不自由のある人に自分の存在を気づいてもらってから声をかけるようにします。また、話題に関する具体的なものなどがあればそれをみせたり、指さすなどしてから話はじめるとよいでしょう。


 エ ゆっくり、簡潔なことばで話す
 早口や複雑な言い回しは避け、なるべく簡潔で短い文章をゆっくり話します。意味のつながりで区切って話すと、伝わりやすくなります。
(区切り方の例)
 ここに/名前を/書いて/ください
 ここでは/タバコは/禁止です


 オ ゆったりと話を聞く
 ことばに不自由のある人が話す時には、ゆったり構えて聞く姿勢が大切です。急いで話さなければと焦ると、ことばが出てこないということもあります。リラックスして話せるような雰囲気作りをしましょう。


(2)質問などのやりとりの方法のエ夫

 ア 「はい」「いいえ」で答えられるたずね方を


 イ 選択肢を提示する



4 車いすの介助の仕方

平地での押し方

(1) 車いすの真後ろに立って、両手でハンドグリップ(介助者が車いすを押すために握る部分)を深く、しっかり握ります。
(2) 前後左右に注意して、―定の速度でゆっくり押します。
(3) 路面の段や溝、砂利道や柔らかい芝生などでは、ハンドルを取られやすくなります。このようなところはなるべく避けるようにして、できるだけ車いすに衝撃や振動を与えないようにしましょう。傾斜している道や凸凹道では、特に左右のバランスに注意しながら押すようにしましょう。
 ア 車いすを止めるときや、乗り移る場合などは、必ずブレーキをかける習慣をつけましょう。
 イ 車いすを自力で動かせる人の場合でも、疲れたときや、路面状況が悪いときには介助が必要になる場合があります。
 ウ フットレスト(足を乗せる台)に足がのっていなかったり、手が大車輪に触れると、乗っている人にけがをさせてしまいますので注意が必要です。
 エ 砂利道や芝生を避けるのが原則ですが、やむを得ずこのようなところを越えなければならない時には、キャスター(前輪の小さなタイヤ)を上げて(キャスター上げについては後述します。)そのまま静かにゆっくりと押していきます。


キャスター上げ
 車いすは、少しでも段差や溝があると、キャスターがつっかえたり、はまりこんだりすることがあります。このような場合は、キャスターを上げて後車輪だけでバランスを保ちながら、乗り越えます。
上げ方(*下ろすときはこの逆で行います。)

 ア ティッピングレバー(車椅子の後部に出ている棒)を踏みます。
 イ ハンドグリップを押し下げます。
 ウ 膝と腰を軽く曲げてバランスを保つようにします。


坂道では
 《上リ坂》
 後ろから少しからだを前に傾けて―歩―歩確実に押し上げます。押し戻されないように注意してください。

 

 《下リ坂》

 ア 緩やかな下り坂では、前向きで、車いすを引くようにして下ります(車いすだけが先に行く危険があるので、十分引き寄せてください)。
 イ 急な下り坂では後ろ向きで車いすを支えながらゆっくりと下ります。介助者用ブレーキがついていれば軽くかけながら下ります。


段差の上り下り
ア キャスターを上げます。 イ キャスターを段にのせます。 ウ 後輪を押し上げます。



★できるだけ衝撃を少なくするように気をつけましょう
★後輪を段の角につけたまま、持ち上げずに押し(引き)ましょう。
★段差を下りるときは、上りのときと同じ要領で後ろ向きに引いて下ります。

階段の上り下り
 車いすを持ち上げるときは、図に示した所を持ちます。しかし、車いすによっては、持ったときにはずれるところがあります。本人や介護者に持ってよいところを聞いてください。足をのせる部分や左右のひじかけ、介護者用にぎり、車輪もはずれるタイプがありますので注意してください。

 ア 車いすを階段に対して前向きにし、ブレーキをかけます。
 イ 介助者は各自の持ち場につき、車いすを持ち上げます。
 ウ 歩調を合わせてゆっくり―歩―歩階段を上がります(降りるときは同じ要領で降ります。)。

介助者が4人の場合(基本的には4人でおこなうようにしましょう。)


介助者が3人の場合


電動車いすの場合は
電動車いすは、大変重いものです。階段や段差などで持ち上げる必要があるときには、大勢(最低6人)で持ち上げるようにしましょう。
持ち上げるときには、走行用電源スイッチを必ず切ってください。
車いすによっては、持ったときに、はずれるところがありますので、本人や介護者に聞いてから持つようにしましょう。